ところがイタリアだけは不思議と、ちょうど木のような、エポウッドと呼ばれるエポキシの木ですね。それを使うんですけれど、これはA液とB液を混ぜて3時間くらい待つと堅くなって、それをノミとカンナとノコギリとサンドペーパーで作るんです。なんでそんなめんどくさいことするのかなっていうと、これは堅い素材でものを作るとできあがるものも実は堅く見える。粘土みたいな柔らかい素材でものを作るとできあがるものも実は非常に柔らかく見える。外に出て走っている日本車のデザインを見てもらって、それに粘土の色を塗ったらどうなるか想像してみてください。もうそのまま粘土に見えます。それは実は粘土で作ってるからです。粘土に見えるどろどろのデザインが日本車になっていて、世界中で評価されていない。それに対してイタリアっていうのは、あまり余計なことできないです。木みたいなもんだから、キャラクターラインなんてこんなもんだから。せいぜいこのくらいの大きさですね。もう小さなこんな面の表情なんてとても出せない。でも全体のたたずまいとか、プロポーションとか、かたまりとか、そういうことがよく表現できるのがイタリアのデザイン。それはなぜかっていうと、大理石を削っていたミケランジェロとかダヴィンチの頃からの職人技というのがずっと今の工業界で生きていて、それがこの車作りに生きていることに気付いた時に、ものすごく感動しました。それはやっぱりイタリアという文化があって、それを生かせる人間がいて、チーム力があって、そういう工業界があって、今があるんだな、と。そういうことが後でつながってくる。それが僕が日本に戻ってくるひとつのきっかけになりました。